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私と演劇16

蛍稽古15

★写真は「蛍よ妖しの海を翔べ」の稽古風景です。

★私と演劇「16 修羅の日々」

★さて、先輩に借りたお金で仙台行の夜行寝台列車に乗り、翌朝仙台へ着いた小生でした。

★既にKは東京へ帰った後で、勿論半年ほど前にT子の両親に頭を下げ「結婚を前提に付き合わせてください」と私が挨拶していた以上、T子が半年後に別の男Kを実家に連れて行くのは流石にはばかられたのだと思います。

★どこかに泊まらせ、松島等を案内して、Kを東京に帰らせたのだと思います。

★事情を知らない、T子の両親は小生を大歓迎し、暫く泊まっていきなさいと言いました。

★仕方なしに、呉服屋とたばこ屋をやっていた彼女の店の手伝いをしたりして数日過ごしました。

★T子は小生に太宰治の人間失格の文庫本を差し出して、これを読んで御覧なさい等と言う始末です。

★数日後、私は彼女の実家に別れを告げ、東北本線の白石という駅で、1泊し、彼女と待ち合わせて、一緒の汽車で東京に帰えることにしたのでした。

★白石から一人タクシーに乗り、山の中の温泉に行きました。その時すでに私はボロボロに傷ついていて、情けない話「死のうか」とか、「死んだ方がましだ」と考えていました。

★何で手に入れていたのか、小さな薬瓶にいっぱいの睡眠薬を持っていました。瓶の中の薬を全部一度に飲めば苦しいだろうが死ねると思ってもいました。

★ところが、若い男の一人客で、なんとなく様子がおかしいとわかったのか、温泉宿では、男の番頭さんがぴったりと私について、お酌をしたり、飯を食べるのを世間話をしながらずっと見守っているのです。

★いささか酒に酔ったこともあり、その夜は薬を飲むきっかけを逃してしまいました。

★あまり眠られず、翌朝、山の川の河原へ出て、山に囲まれた水の流れをじっと見ていると、自分の小ささや、愚かさがしきりと思えるような気になりました。

★大自然のきりもない営みに比べたら、人間社会の裏切られた等という事が如何にちっぽけな事かと思えてきたのです。

★私は何もかも許し、また新しく生活しようと思えて、自死の道は止めました。

★その日の昼過ぎ、彼女が仙台から乗って来た列車に白石で乗り込みました。しかし、なんとなくそのまま、東京に帰るのはしゃくでならなかったので、埼玉県の上尾という駅で彼女を私は下しました。そして、タクシーですこし離れた旅館に泊まることにしたのです。

★本当にそこには爛れたような鬱屈した感情しかありませんでした。私は愛もなく、ただ獣のように彼女を抱いたのだと思います。

★翌日東京に帰り、別れれば正解だったのでしょうが、また同じように同棲生活を続けたのです。

★しかし、もう同じような生活は戻りません。ちょっとした喧嘩になれば、すぐ彼女を私はののしり、彼女は別れると言って叫び私はますます眠れなくなり、ノイローゼ状態になってしまいました。

★彼女の眼の前で遮断機の下りて電車の来ている踏切へ私は突っ込もうとしたり、新宿の人が群れる雑踏で私は倒れこんでしまったり、挙句の果ては彼女に暴力をふるうというような、修羅のような地獄の日々が約半年続いたのです。

★それは壮絶な日々でした。彼女が薬を飲んだと言って狂言自殺をしたこともありました。

★色々あって半年後、アルバイトに出た先で熱心に通ってくる変な学生から、ラブレターを渡されたと笑いながら見せました。今でいうストーカーのような奴で初めは確かに彼女は気味悪がっていたのです。

★ある雨の日、私と彼女が歩いていたら、待ち伏せしていたその男が横合いから彼女の手を取りそうにして「何だこの野郎!」と追い払ったこともあります。

★ただ女心は分からないのですが、ある日彼女は仙台から両親がやって来るので、同棲が分かるとまずい。ついては私にしばらく東村山の実家に帰っていてくれないかと言い出したのです。

★信じやすい私はそのまま信じて、暫く実家へ戻り、その頃「こだま」で春の公演のテネシー・ウィリヤムズの「焼けたトタン屋根の上の猫」という芝居の稽古の演出に入っていました。

★その公演でT子は主役の役をやりたがっていましたが、周囲の状況も含めて、そういう公私混同だけはしたくないので、彼女には裏に回ってほしいと言っていました。

★今となってはどちらが正しいのかわかりませんが、ある朝、彼女の頼みを私は「分かった」と言ったのに嘘をついて役に附けなかったと言い出しました。私は言うはずもないのにと思ったけれど、彼女も追い込まれていたのかもしれません。

★ある日実家から送られてきた彼女の授業料の現金封筒がどういういきさつか、私の処に来たのです。それを知った彼女が、二人で入ったこともない喫茶店のレジにその現金封筒を預けておいてくれと稽古場へ人を介して連絡してきたのです。

★私は流石に怪しいと思い、その日喫茶店のレジが見える2階席で張り込むことにしました。

★その午後、髪をすっかり短く切った彼女が見たこともない白いセーターを着て1階のレジに姿を現したのです。

★本日これまで。おやすみベィビー!また明日。
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プロフィール

G.C(グランド・キャノニオン)

Author:G.C(グランド・キャノニオン)
G.Cことグランド・キャニオン・ビリーブ・ミーこと高貴な谷、つまり 高谷信之のこれはブログです。

G.C(ジードットシー)は1972年からNHKラジオドラマを約80本書き、映画、テレビ中学生日記等主にNHkのシナリオを手掛ける。【ラジオドラマ】「枝の上の白色レクホン」では、芸術祭大賞をとり同じく『天主堂』ではギャラクシー賞優秀賞をとる。
また若者たちと劇団ギルドを1999年に立ち上げ、20年続け、37回公演で2018年秋解散した。70代後半に向かい、演劇のプロジェクト、あくなき、小説・演劇・シナリオの挑戦創造に賭けており、また日本放送作家協会の理事は岩間良樹理事長の時代より20年以上続けた。
他に長崎県諫早図書館・壱岐未来座等のシナリオの書き方、演劇の演出講師、指導等もしている。

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