別役舞台の凄さ

★写真は久々に顔を出した富士の山頂です。すこしコントラストを強くしています。
★さて、本日は夜、六本木俳優座劇場に向かいました。
★五月舎の俳優養成所で同期の名取 敏行君の名取事務所の公演、別役 実さんの新作背骨パキパキ「回転木馬」を観に行ったのです。
★お世話になった元演劇集団円の三谷 昇さんと同じく円の山口さんが出ていたからという事もあります。
★山口眞司さんはギルドのコレドシアターで拙作・演出の「誰?」に60回も出てくれた方で、三谷昇さんはその昔円のアトリエ公演で美術をお願いしてから、拙作のラジオドラマに何回も出演いただいたり大変お世話んなっている大先輩でもあります。
★別役実さんとはまだそれほど処女作の「象」が売れていない頃、京都の八坂会館で新劇団自由舞台(早稲田小劇場の前身)「象」の再演をやりその折、小生男2を演じ、なんと役者が足りなくて演出の鈴木忠志が男1を演じたのを昨日のように覚えています。
★ちなみに早稲田祭で後にも先にも小生が主役をやり大失敗したジャン・コクトーの「オイディプス王」にも、鈴木忠志は役者として、解説者の羊飼いの役で出ていて、あの世界の演出家鈴木忠志と、役者同士として2度舞台に立ったのは私だけかと思います。
★それはともかく、あの時は小生19歳、あれから52年、実に幻のように飛び去った年月です。
★当時、別役作品生原稿のチェホフ3本立ての繋ぎを別役さんが漫才形式四百字詰め原稿用紙で書かれたものを、今は亡き、ミツカン酢の御曹子岩味 正臣とともに演じたことを覚えています。あれは都立北園高校の学園祭でした。
★そうした様々の感慨と共に見る為か、病と闘いながら必死に書かれた別役さん139作目のこの作品は、おそらく、別役作品のファンには物足りないものでしょうが、小生にとっては、様々なコラージュがまるで、ごタールの映画のように迫ってきて、何とも胸いっぱいになりました。
★神様役の三谷昇さんも、その圧倒的な存在感は健在で健在どころか益々増しているようだし、途中から役を替わってやったという山口さんも見事な口跡とメリハリのある芝居もまた圧倒的な演技でした。
★女性陣ではやはり、新井 純さんの存在感が光っていました。
★本当に別役さんが死というものと闘い、乗り越えて、全身全霊で己の死をも笑い飛ばそうとした作品なのです。
★そこにはむしろ技巧が全てそぎ落とされて、ただ別役さんの内奥からほとばしる論理と感情、この芝居の言葉で言えば塑像と彫像、現在と永遠に問いかけている芝居と思えました。
★心と背骨が揺さぶられるような芝居でした。
★ただ本当に残念なのは俳優座劇場に空席が多かったことです。
★別役実と言えば、現存する作家の中では好き嫌いはともかくとして1,2を争う代表的な劇作家です。
★その方の病の底から這うようにして書かれた舞台がこんなに空席が多いとは何という事でしょう。
★多分口当たりのいい、わかり易い舞台がそこかしこで、満員の盛況なのでしょうが、本当に芝居を選んで見に来る見識のある観客が少ないこの国の現状はお寒い限りです。
★ヨーロッパの演出が全ていいとは思いませんが、今回のペーター・ゲスナーと言う演出家の演出も、どこか、日本的なウエットなものを充分理解したうえで、ドライなそしてリアリティーある演出がひかえめでもあり、大変良かったと思います。
★こういう芝居を観てしまうと、言葉に頼りすぎた自らの芝居やドラマツルギーの稚拙さが恐ろしくなります。
★おそろしくなり、やはりこのままでは死ねない。もっと研ぎ澄ました舞台を創らねば死ねないと思ってしまうのです。
★名取 敏行は勿論素晴らしい芝居を造っていますが、今回はとてつもなく素晴らしく誇りに思える舞台でした。
★なお、舞台は俳優座劇場で明日25日土曜日14時と明後日14時やっています。当日は5500円ですが、念のため。
★本日これまで。お休みベイビー!また明日。
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