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三保松原に住んでいた頃

雲一つなき富士遠景

★写真は世界遺産に決まりそうな富士山の雲一つなき姿です。

★富士山が世界遺産の文化遺産として登録されるようだ。

★正式な決定は6月だというが、この登録の中から三保松原(みほのまつばら)がはずされたという。

★富士山から45キKm離れているというのが主な理由のようだ。

★ユネスコの諮問機関イコモスが三保松原を外すように言ってきたそうだが、そもそも富士山はそこに登ることもさることながら、色々な方面から富士を仰ぐということが、どれほど人々に力や勇気を与えてきたかという事が、わかっていない。

★欧米人は(日本人にも委員はいるのか?)そこから45Km離れている等という即物的な事を評価の対象にしている感覚が、何とも理解に苦しむ。

★三保松原には羽衣伝説もあり、その伝説の松は今もある。

★昭和26年の冬だったと思う。小学3年生だった小生は三保松原に数か月住んでいた。

★当時母方の兄が東海大学の教授をしていて、三保には東海大学の寮があった。

★長野県の須坂で5年間の日本測定器という軍需工場(これこそ現在の株式会社ソニーの前身である)の解体と残務整理を親父は任され、それがやっと終わり、当時五反田で東通工というソニーの前身の会社は親父を雇ってはくれず、切り捨てた。

★人のいい親父は職を失い、つてをたよって横浜に職を得たが、家族の住むところがない。妻と子供5人の計7人は母方の兄(小生からみると叔父)に無理やり頼んで、空いていた東海大学の寮に内緒で住まわせていただくことになった。

★叔父は三保に家があったが、さすがに6人が風呂に入ることははばかられた。寮に風呂はあったが、もぐりの居候ゆえに風呂は借りることが出来なかった。

★三保は小さな岬である。当時風呂に入るためにはポンポン船で海を渡って清水の港に行くか、街道を陸路1時間ほどかけて自転車で行くしかなかった。

★父が横浜の仕事から帰ってきた時、自転車の前と後ろに小さい2人を乗せ、陸路を自転車で、小生と妹は母と一緒に内海をポンポン船で渡って風呂に行った。勿論一番下の双子は交代でお留守番である。

★海が凪いでいる日はよかったが、時化や台風の後は船べりでゲーゲー吐きながら銭湯にかよったものである。

★1週間に一度くらいの入浴に、本当に苦労したのを覚えている。

★転校した三保小学校では言葉が極端に違い「わりゃあ、どこからきただ」といわれて、われとは自分の事と認識している小生はさっぱり分からなかった。そのためずいぶん石を投げられたりしていじめられた。

★そんな悲しい記憶しかない三保だけれど、羽衣の松を見に行き、その折海を隔ててみた富士山の堂々たる姿は忘れない。

★以来静岡市に引っ越してからも、屋根の上から見る富士山の雄姿は、本当に貧しい日々の心の支えだった。

★本当に20以上も職を変えた父がここ東村山の聖書学院の職員となって、一家は落ち着き、貧しいながらも放浪を終えた昭和39年から再び富士は遠くに見え始めた。

★そして、14年程前ここに住み始めてから富士は風さえあれば、特に冬は毎日のようにベランダから富士を望むことが出来る。

★へそ曲がりの所為か、人には励まされたことは少ないが、富士にはどんなに励まされ勇気づけられたことか。

★その富士山が世界遺産になるという。めでたいことである。

★ただ、三保松原が除外されたことが残念である。

★一方で逆に三保の松原と羽衣の松は、ひっそりとそこで富士を仰いでいる姿を想像すると、まあ、よかったかとも思う複雑な心境である。

★本日はこれまで。

★おやすみベイビー!また明日


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theme : 記憶の果て
genre : 日記

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プロフィール

G.C(グランド・キャノニオン)

Author:G.C(グランド・キャノニオン)
G.Cことグランド・キャニオン・ビリーブ・ミーこと高貴な谷、つまり 高谷信之のこれはブログです。

G.C(ジードットシー)は1972年からNHKラジオドラマを約80本書き、映画、テレビ中学生日記等主にNHkのシナリオを手掛ける。【ラジオドラマ】「枝の上の白色レクホン」では、芸術祭大賞をとり同じく『天主堂』ではギャラクシー賞優秀賞をとる。
また若者たちと劇団ギルドを1999年に立ち上げ、20年続け、37回公演で2018年秋解散した。70代後半に向かい、演劇のプロジェクト、あくなき、小説・演劇・シナリオの挑戦創造に賭けており、また日本放送作家協会の理事は岩間良樹理事長の時代より20年以上続けた。
他に長崎県諫早図書館・壱岐未来座等のシナリオの書き方、演劇の演出講師、指導等もしている。

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