★写真は姫路城通称白鷺城です。
★大晦日は毎年複雑な思いで過ごす。
★子供の頃玄関の上り框に借金取りのお兄さんが来て、お袋といつも喧嘩になった。
★「一銭もないんだから、家探しでもなんでもしたら!」とお袋。「俺だって一銭ももらわずに帰ったら親方におこられちまうよ!」と八百屋兼乾物屋のお兄さん。
★一年間つけで野菜や乾物を全部買って来て、その払いを取りに来たのだけれど、うちでは払えないのだ。
★親父はと言えば、静岡と言えども寒風の大晦日の夜、自転車で決まって何処かに姿を消す。
★あのころは(昭和30年頃)町に喫茶店などなく、下戸で酒も飲めなかった父は紅白歌合戦がラヂオから流れている頃、どうやって、あの3,4時間を過ごしていたのだろう?
★其れだけは聞き忘れたが父は64歳で亡くなってしまった。
★だからして、借金はあったとしても、借金取りが玄関に居座っていない紅白歌合戦だけは、ただ意味もなく今も毎年観ている。
★やがて、寺の鐘が鳴ってラジオが「行く年くる年」になると、八百屋のお兄さんも諦めて、姿を消して、父がいつの間にか帰って来ていた。
★今年の紅白はユーミンが歌っていた。「・・・・小さい頃は神様がいて・・・・」
★この年にして分かった。多分小さい頃、俺には神様がいなかったんだと思う。
★蒲鉾工場で小魚を切り裂くバイトをして帰ってきて、黒いジャンパー(ブルゾンじゃねえぞ)をそのバイト代で親父と買いに行って、残りのお金を父に貸した。
★親父は「くれ」とは言わなかった。「貸してくれ」と必ず言った。でもその金が帰って来たためしはなかった。
★身体に沁みついた生魚の匂いは銭湯に行っていくら躯をこすってもぬけなかった。
★だから、蒲鉾は随分と長い間食えなかった。今は平気だ。乗り越えた。
★貧乏から逃れるためにフィクションの世界に逃げて芝居をやりだしてから、神様が逆に俺に寄ってくれるような気がした。
★だから、どんなに苦しい公演でも芝居の神様によって奇蹟がおこり、乗り越えられてきた。
★昨秋劇団ギルドは20年目にして39回の公演をやって解散した。
★芝居は勿論違った形で続けて行こうと思っている。神様が離れないように。
★ユーミンやサザンオールスターズが出てきても、「全然ピンとこないなー」と言ったら家人が「多分この人たちはハングリーじゃないからじゃないの」と言った。
★なるほど子供の頃ハングリーではなかった家人がそういうのだからそうかもしれないと、なんとなく納得した。
★それにしても・・・・と思う。60年以上も前の事にこだわっている自分が何とも情けないやら、悲しいやらだけれど、年をまたいで、風呂に入った。
★風呂に毎日入れるという幸せをしみじみと噛みしめる。
★今年はどんな年になるか? いやそれよりも、どのくらい後余命が有るのかが気になる新年だ。
★しかし、ともかく人が人として最低限生きられる年で有りたいとしみじみ思う。
★ここまで、生きて来れたのは本当に色々な人との出会いがあり、その人たちに助けられたからだも改めて思う。
★おやすみベィビーまた気が向いたら。
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